旧来のがん遺伝子スクリーニング法はマウス3T3線維が細胞をアッセイ系に用いており、血液細胞に特異的ながん遺伝子の同定は不可能であった。従って造血器悪性腫瘍に特異的ながん遺伝子をスクリーニングするためには、血球を用いた新たなアッセイ系を確立することが急務である。我々はレトロウィルスベクターと組換えファイブロネクチンを用いることにより、血球細胞に対する高効率cDNAライブラリー導入法を開発することに成功した。本法を用いることでマウスIL-3依存性細胞株BA/F3に約90%以上という驚異的な導入効率を得ることができた。そこで自治医科大学血液内科の協力によりこれまでに急性単球性白血病患者骨髄および非ホジキン悪性リンパ腫リンパ節のサンプルを得、それらよりmRNAを抽出後pMXレトロウィルスベクターを用いてcDNA発現ライブラリーを構築した。本ライブラリーより作成したレトロウィルスをマウスIL-3依存性細胞株BA/F3に感染させIL-3非存在下で培養したところ、2週間後に単球性白血病由来のライブラリー感染細胞から培養クローンが得られた。得られたBA/F3の増殖クローンより導入cDNAをPCR法を用いて回収したところ約2.2kbpと約2.0kbpの2種類のバンドが得られた。これらcDNAの前縁期配列を決定すると共に本cDNAがコードする蛋白質の機能解析を行う予定である。また同様なFAB分類の白血病患者における上記遺伝子の発現異常および遺伝子再構成の有無をスクリーニングする。また本cDNAの発現レトロウィルスを感染させたマウス造血前駆細胞によるマウスの造血再構築実験を行い、in vivoにおける本遺伝子の発がん性を検証する。
|