我々は、最近、クローニングされたセリンスレオニンキナーゼであるAIM-1が、anaphase B、telophaseにおいて発現が抑制されることが、巨核球の多倍体化という現象につながるのではないかと推測して、以下のような実験を行っている。すなわち、CD34陽性細胞にSCFとIL-3と添加し、液体培養し、同時に、あるいは時期をずらして種々の濃度のAIM-1のアンチセンスオリゴを添加し、その影響について検討した。しかし、現在までのところ、巨核球系細胞の多倍体化は認めらない。今後、実験系の種々の改善を試みて、さらに検討していく予定である。 多倍体化機序におけるNF-E2の関与をさらに検討するために、NF-E2 p45をMeg-J細胞へウイルスベクターを用い導入した。細胞の形態、ploidyには変化がみられなかったが、CD41の発現が増強した。多倍体化が認められない原因として、ヒストンアセチル化のためNF-E2の転写が稼働しなかった可能性を考え、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤trichstatin Aの添加を行ったが、多倍体化は認められなかった。巨核球の多倍体化において、Rasの関与が報告されており、Meg-JおよびMeg-J transfectに導入したところ、多倍体化傾向は認められた。しかしながら、K562とTPOで誘導されるような多倍体化には至らず、Ras以外の機構も関与していると考えられる。現在、さらに巨核球の多倍体化の機構の検討のため、CD34陽性細胞にNF-E2を導入し、検討を進めている。
|