研究概要 |
血小板を産生する血液細胞である巨核球の多倍体化のメカニズムについて、特に細胞周期関連蛋白、転写因子に注目して検討した。ヒト巨核芽球性白血病細胞株であるMeg-J細胞にインドロカルバゾール系化合物の一つであるK52aを添加し液体培養すると、成熟巨核球系への分化傾向が、認められ、さらに正常巨核球と同様に多倍体化した。そこで、この多倍体化過程における種々の細胞周期関連蛋白の変化について検討した。その結果、多倍体化の際にはcyclinB1およびcdc2の一過性の上昇と、それに続く急速な低下が認められ、この変化が巨核球の多倍体化に重要な役割を果たしているものと考えられた。 このMeg-J細胞の多倍体化過程における各種転写因子(NF-E2 P45,GATA-1,GATA2,Ta1-1/SCL,Evi-1,Maf-K)の発現について検討したところ、NF-E2 P45のみ発現の増強が認められた。また、Gel shift assayにおいても明らかにNF-E2のDNA結合能の増強が認められた。以上の結果より、Meg-J細胞の多倍体化過程にNF-E2 P45が関与している可能性が示唆された。そこで、NF-E2 p45のアンチセンス、センスオリゴヌクレオチドをTPOおよびK-252aとともにMeg-J細胞に添加して培養し、その影響について検討した。その結果、Meg-J細胞の多倍体化はNF-E2 P45アンチセンスオリゴヌクレオチドにて完全に抑制された。これらの結果より、NF-E2 P45は巨核球系細胞の多倍体化を制御している転写因子であることが示唆された。
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