研究概要 |
同種骨髄移植後の重大な合併症である急性移植片対宿主病(GVHD)は、移植片に含まれるT細胞が宿主を認識し、Fas/Fasリガンド系またはパーフォリン系を経て組織を障害するが、このときIL-12、IL-2、IFN-γ、TNF-α、IL-6など多くのサイトカインが順次活性化されいわゆるサイトカインカスケートがGVHDの発症、進展にかかわっている。 我々は、IL-18(IFN-γ inducing factor ; IGIF)が急性GVHDのサイトカインカスケード一員をなすとの仮定に基づいて、急性GVHD患者血清中のIL-18濃度をELISA法で測定し、血清IL-12、血清IFN-γと比較した。その結果、血清IL-18は、白血病寛解期に低く、骨髄移植後も低値にとどまるが、急性GVHDをおこすと上昇し、治療で急性GVHDが軽快すると低下する。IL-18は感染では上昇せず、一方IFN-γは、GVHDのみならず感染で上昇することが多く、IL-18の変動の方が、急性GVHDと密接に関連していた。IL-12は急性GVHDの発症に関わるキーサイトカインとされているが、急性GVHDで血清レベルでの有意な変動はみられなかった。このようにIL-18は急性GVHDに関与しているサイトカインといえるのみならず、その病勢のよいマーカーとなることが示唆された(Br J Haematol, accepted)。マウスモデルの検討でも、急性GVHDに一致して、血清IL-18が上昇する。このモデルでIL-18を腹腔内に投与すると、急性GVHDが増悪し、生存期間が短縮した。また、DBA/2マウスの脾細胞をBDF1マウスに移植する慢性GVHDモデルでは、移植初期にIL-12を投与すると、急性GVHDが誘導されることが報告されているが、このモデルにIL-18を投与しても急性GVHDは誘導されなかった。これらのことにより、IL-18は急性GVHDを誘導する因子ではなく、増悪させる因子であるといえる。
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