研究概要 |
同種骨髄移植を受けた慢性骨髄性白血病(CML)の再発期に、ドナーリンパ球輸注(DLT)療法を施行。白血病マーカーとしてのBCR/ablキメラ遺伝子をPCR法にて腫瘍細胞の存在を確認した。ドナーリンパ球輸注後、患者骨髄のTリンパ球のVβレパートリーでVβ5a,Vβ3の高頻度発現を認め、2回目DLT後CMLクローンが消失した時点にも、このVβレパートリーの偏りが持続していた。さらに高頻度VβレパートリーのJβ遺伝子の使用状況を検討したところ、13種類の内2〜3種類のJβ遺伝子に集中していた。このことは、腫瘍細胞の抗原性をCDR3領域で認識するT細胞がオリゴクローナルに増殖・抗腫瘍作用を発揮しているものと示唆された。このケースにおいてGVHDは臨床的に認めていない。 CMLのBCR/ablキメラ谷成ペブタイド特異性T細胞クローンの試験管内実験で、CD4^+CTLクローンを作成しVβレパートリーを検討した所、HLADR一致した者では同様の2〜3個のVβの高い頻度であった。しかしながら、Jβ遺伝子の検討ではポリクローナルが示唆された。 これらのことから、腫瘍抗原特異的に反応するT細胞が存在し、GVHDを生じることなくGVL効果のみを示す細胞を誘導できることが示唆された。また、それはαβ-T細胞の中で最初にTCRの可変部(V)がある程度選択され、続いてJβ遺伝子が選択されオリゴクローナルに腫瘍細胞に対し殺作用を示すと考えられた。
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