研究概要 |
PU.1はEtsファミリーに属する転写因子であり、その活性化がマウス赤白血病(MEL)の発症に関与すると考えられている。我々はPU.1遺伝子の亜鉛誘導性発現べクターを導入したMEL細胞(PU.1細胞)に塩化亜鉛とともに分化誘導剤であるDMSOを投与すると、分化の誘導は起こらずアポトーシスが誘導されることを見い出し報告してきた。今回、これらの現象の誘導に伴い発現の変化する遺伝子の同定をDifferential Display(DD)法により試みた。塩化亜鉛とDMSOの同時投与前ならびに投与後24、48、72時間のPU.1細胞からRNAを抽出しDDを行った。シグナルに変化の見られたcDNA断片については、コントロールとして用いた細胞(塩化亜鉛あるいはDMSOを単独で投与したPU.1縦胞、および塩化亜鉛とDMSOを同時に投与したmock細胞)由来の対応するシグナルの変化と比較し、その変化が分化抑制およびアポトーシスの誘導時に特異的であることを確認した。上記の条件下で発現の変化するクローンは61であったが、そのうち24クローンは既知の遺伝子であり37クローンは未知の遺伝子であった。既知の24遺伝子のうち発現が増加したものは4遺伝子であり、その中にはmitochondrial tRNA geneなどが含まれていた。また発現が減少した20遺伝子のなかには、血球系細胞の増殖への関与が知られているnucleosome assembly protein 1(NAP-1)related geneや、神経系細胞の分化や機能に関与すると考えられているcerebellar degeneration related(cdr)gene 2,catechol O-methyltransferase(COMT)gene,monocarboxycylate transpoter(MCT1)gene,neural dfferentiation-associated gene,p205などが含まれていた。
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