私達が精製した白血病細胞の分化誘導抑制因子が、nm23遺伝子産物であることを明らかにして以来、白血病細胞におけるnm23遺伝子の発現とその臨床的意義を検討してきた。白血病細胞ではnm23mRNAの発現レベルが高く、そのレベルは治療抵抗性や予後不良と相関し白血病の新しい予後因子となることを報告している。 平成10年度から平成12年度における本研究は、腫瘍細胞におけるnm23遺伝子の発現と機能の解析および臨床的意義の解析を目的とした。この3年間の主な研究成果は、細胞外に分泌されるNM23-H1蛋白質を定量するためのシステムを開発し、血中NM23-H1蛋白質が白血病や悪性リンパ腫の簡便な予後予測法となることを世界に先駆けて報告し、同時に特許出願申請と実用化へのプロセスを進めたことである。また、NM23-H1蛋白質の細胞外への分泌に加え細胞表面での発現も検出し、この蛋白質の細胞外での新しい機能を示唆した。さらに、細胞表面NM23蛋白質を分子標的として補体依存性細胞障害を誘導できることを明らかにし、治療の分子標的としての有用性を示唆した。 環境汚染や高齢化に伴い今後益々増加してくることが予想される悪性リンパ腫の治療指針の選択に有用な予後因子であると考えられる。また、血中NM23蛋白質の定量系の開発により固形腫瘍への応用も可能になった。しかし、この顕著な臨床的意義を明らかにするに止まり、その分子基盤の研究は途についたばかりである。白血病細胞や悪性リンパ腫細胞におけるnm23遺伝子の過剰発現や悪性度発現の分子基盤の解明は、nm23の多彩な機能の解明においても重要な今後の研究課題である。
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