研究概要 |
穎粒球や単球等の骨髄系の細胞では、過酸化水素H_2O_2の産生が他の細胞に比べて多く、殺菌などその役割は重要である。今回の研究では、ヒト前骨髄性白血病細胞株HL60とこの亜株でH_2O_2抵抗性のsubcloneであるHP100を用い、これら細胞のcharacterizationの比較と放射線、紫外線や腫瘍壊死因子(TNF)に対する感受性を検討した。HL60とHP100における抗酸化関連遺伝子の発現の比較では、HP100細胞にcatalaseの発現量が多いが、myeloperoxidase(MPO)、TNFは全く発現が見られず、glutathione peroxydase(GSH-PX)のレベルには差が認められなかった。これらの刺激に対する感受性をapoptosisについて調べたところ、HP100細胞はHL60と比較していずれの刺激にも抵抗性であった。この機序を調べるためにこれらの刺激後H_2O_2の産生を測定したところ、HL60細胞では放射線、紫外線TNFによりその産生が増加した。一方、HP100細胞では紫外線照射時のみその産生がみられた。また、遺伝子発現・転写因子の1つNFkBの活性化を調べたところ、HP100細胞はHL60細胞に比べactivityが高く、IRに対してはどちらの細胞もNFkBの活性化が認められたが、TNF,H_2O_2に対しては、HL60細胞のみが増加を示した。これらのことは、HP100細胞がこれらの刺激に対して抵抗性である機序には、H_2O_2直接以外の機構が存在することを示しており、現在検討中である。また、HL60、HP100におけるこれらの刺激により誘導されるapoptosisついてapoptosis関連遺伝子であるBC12、Baxのレベルを調べた。HP100細胞ではHL60細胞に比べて、BCl2の発現が高くBaxのレベルに差はなかった。これらの刺激に対しては、どちらの細胞もそのレベルに変化が見られず、これらの細胞における放射線、紫外線やTNFによるapoptosisは、BCl2/Baxに依存しないことも明らかにされた。
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