(1) pICln結合タンパクの検索: pIClnの細胞内分布は、腎、脳、骨格筋、心、精巣において異なり、腎においてはほとんど全て不溶画分に存在するのに対して、骨格筋では可溶画分に存在していた。骨格筋の可溶画分に存在するpIClnに結合するタンパク検討したところ、全て一定の長さのF-actinであった。pICln-actinの大きさは約34万でありpICln対actinの量比は約1:7であった。骨格筋においてpIClnは、F-actinの大きさを規定し、筋の収縮-弛緩による細胞容量の変化に対応して機能していることを推定できた。 なお、コンビナントpIClnをF-actinと結合させることはできなかったので、この複合体形成には何らかの介助機構があるものと推定された。 (3) pIClnの細胞防御機能の観察: pIClnのcDNAをE.Coliに挿入すると、E.Coliが低浸透圧耐性を獲得することを観察した。そこで、pICln分子中のどの部位が生理機能発現に不可欠かcDNAの断片を用いて検討したところ、意外にも細胞膜に親和性のある部分を除去した特定部位の極めて短い断片の発現でも低浸透圧耐性を賦与できた。pIClnは、塩素イオンチャネルを構成するのではなく、細胞外低浸透圧の情報伝達に機能していること、および、pIClnを生理的には保有していない細菌でもpIClnの機能を発揮するという興味深い結果を得た。
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