ステロイドホルモンは、核内受容体を情報伝達物質として作用を発揮している。糖質ステロイドの細胞内における作用機序を明らかにするため、培養メサンジウム細胞および実験的抗糸球体基底膜腎炎を用いて検討した。糖質ステロイドはp21CIP1遺伝子のプロモーター活性を刺激して発現を高めることによって細胞周期を停止していることがわかり、この薬剤が腎炎治療に有効にはたらく1つの機序と考えられた。これらの結果は1999年10月に開催されたの第32回アメリカ腎臓学会で発表し、現在論文を準備中である。 核内受容体に関わる情報伝達系の研究を行っていくつかの成果を得た。Nitric oxide(NO)生産に対するnuclearfactor-kB(NF-kB)、interferon-γ(INF-γ)の関与を解明するため、メサンジウム細胞を用いた検討を行ったところ、iNOSは活性化NF-kBがなくとも誘導されること、NF-kB阻害薬はp65のみを抑制すること、JAK2はiNOSを誘導してNF-kBよりもnitrite産生に重要であることを示した。また、腎近位尿細管由来であるLLC-PK1細胞を用いて、細胞周期を阻害するp27Kip1およびp21CIP1が細胞肥大を引き起こすことや、TGF-β-activating kinase-1が細胞周期およびcyclin D1とcyclin Aの発現を阻害することを見出した。 水チャンネル関連の研究で転写機構にも関連するいくつかの成果を得た。たとえば、常染色体優性遺伝腎性尿崩症の患者で見出されたAQP2の変異である809del7が、どのような機序で尿崩症が発症するのかを検討した。ツメガエル卵母細胞を用いた発現実験から、809del7は転写の抑制あるいは蛋白のトラフィッキンング異常をきたしていることが示唆された。これらの結果は昨年の第32回アメリカ腎臓学会で発表し、現在論文を準備中である。
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