研究課題/領域番号 |
10670987
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
木原 達 新潟大学, 医学部, 教授 (80018324)
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研究分担者 |
矢尾板 永信 新潟大学, 医学部, 助手 (00157950)
川崎 克俊 新潟大学, 医学部, 講師 (20152944)
山本 格 新潟大学, 医学部, 助教授 (30092737)
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キーワード | 糸球体上皮細胞 / 培養 / 高酸素培養 / ポドカリキシン |
研究概要 |
糸球体培養初期で増殖してくる細胞には、糸球体上皮細胞(podocyte)マーカーであるポドカリキシン陽性細胞がほとんどみられない。その原因を調べるため、通常のsieving操作によって得られた単離糸球体のうちボウマン嚢のない糸球体を選びだし、培養期間中、経時的に観察を行なった。単離直後一時間以内にpodocyteの空胞状の変化がみられはじめ、この空胞は時間と共にその数を増し、その後podocyteは変性に陥った。培養4日目には大部分の糸球体上にpodocyteの変性を認めた。このpodocyteの傷害変性が、sieving操作等の糸球体単離過程での物理的傷害によるのかどうかをみるため、腎臓のスライス培養で検討した。ラット腎臓をメスで2mm位の厚さに切り、スライス状の組織を培養した。この切断面の表面には、相当数の糸球体が露出しており、その糸球体表面のpodocyteの変化を走査電子顕微鏡で観察した。腎臓をスライス状に切断するとき、メスを3-4回前後に動かして切った場合は、9割以上の糸球体でpodocyteの変性脱落がみられた。ところがメスを一回引くのみで切った場合は、ほとんどpodocyteの変性は認められなかった。糸球体単離過程は、スライス作製過程よりずっと大きな物理的傷害を糸球体に与えることが予想される。したがって、糸球体培養でポドカリキシン陽性細胞がほとんど出現しない原因として糸球体単離過程における物理的傷害が考えられた。また、糸球体培養は、通常air95%/CO_25%下で行なわれ、細胞は低酸素状態で培養されることになる。この条件下でのスライス培養を検討してみると、数日の培養後にはほとんどの腎臓細胞、特に尿細管細胞は死滅し、基底膜が露出した状態になってしまった。これを85%O_2下で培養すると、細胞の生存は良く、スライス断面全面を細胞が被うようになった。以上のことから、podocyteの培養のために、糸球体の単離過程の改善、O_2濃度の影響、よりpodocyteマーカーの確立をめざして検討を続けたい。
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