研究概要 |
糸球体硬化形成の主因はメサンギウム基質の増加によるものとみられ、メサンギウム細胞の機能不全によるものと考えられるがその詳細については明らかではない。 腎糸球体では、内皮細胞、メサンギウム細胞、細胞外基質が互いに連結し、一種の閉鎖領域を形成しており、生理的状態では細胞-細胞、細胞-細胞外基質間の相互作用により巧みにメサンギウム細胞機能・細胞増生が制御されている。これらの制御はメサンギウム細胞表面の種々の機能分子を介して行われると考えられる。我々はメサンギウム細胞表面上に存在するThy-1分子が機能分子として存在しうることを報告してきた(Exp.Nephrol 4:350,1996)。またこの反応はエピトープの異なる単クローン抗体により反応性が著しく異なることから機能エピトープの存在が示唆されている。In vivoのモデルでは、この特異エピトープに対する単クローン抗体により進行性糸球体硬化性病変が高率に形成されることも判明している。これらから、メサンギウム細胞上の内皮細胞との接着分子が、メサンギウム細胞の動態を制御する重要な機能分子として存在する可能性が高い。この分子はラットのメサンギウム細胞表面上に存在するが、ヒト・メサンギウム細胞における相同分子の解析は全くなされていない。本研究はヒト・メサンギウム細胞の内皮細胞との接着に関わる相同分子を検索し、ヒト・メサンギウム細胞の機能分子の解明・解析を行うことを目的とし、本年度は以下の結果を得た。 1)RT-PCRを用いたThy-1相同分子の検索により、培養ヒトメサンギウム細胞にThy-1相同分子が存在することが確認された(第33回米国腎臓学会発表予定)。 2)特異エピトープのヒト相同部位のアミノ酸配列を基に抗体を作製し培養ヒトメサンギウム細胞で検討したところ、Thy-1相同分子と他にいくつかの分子の存在が示唆され現在詳細を解析中である。 この様にヒトにおいてもメサンギウム細胞・内皮細胞の接着に関与する分子がいくつか存在することが示された。今後これらの分子をより詳細に解析することが、腎糸球体硬化形成機序解明に役立つと考える。
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