研究概要 |
本研究は、透析患者にみられるβ2-mアミロイド線維が、in vitroにおいていかに形成され、線維伸長を起こすかを明らかにする目的で計画した。まず、アミロイド線維(fAβ2-m)を,透析アミロイドーシス患者の関節嚢胞壁より,Pras法にて粗抽出後,100,000xg超遠心,および50-60%ショ糖密度勾配超遠沈により精製した。得られたβ2-mアミロイド線維は蛍光色素チオフラビンTで、スペクトル極大は励起側454nm、蛍光側485nmに有意なピークを示し、アミロイド線維濃度に比例して蛍光度が増加することを明らかにした。一方、単体前駆蛋白であるβ2-mは腎不全患者尿から精製したnativeβ2-mを用いた。アミロイド線維の伸長反応を,一定量のfAβ2-mと単体β2-mを37℃でインキュベートし,チオフラビンT(ThT)による分光蛍光定量法と電子顕微鏡による線維形態観察によりモニターすることにより、以下の結果を得た。(i)native β2-mを用いた伸長反応:fAβ2-mをseedとして用い、nativeβ2-mによりfAβ2-mを伸長させた試験系においては,ThT蛍光を指標にした線維伸長はpH2〜3で極大を示し,pH2.5では反応開始後蛍光はラグタイムなく増加し,やがて平衡に達した。このアミロイド伸長反応が一次反応速度論モデルに適合した。一方,伸長した線維の超微形態観察では,輻9〜16nmの典型的なアミロイド線維の明らかな伸長が認められた。強拡大の観察では,これらの線維は2本あるいはそれ以上の細線維によるツイスト構造を形成しており,2本の細線維で構成された線維のらせん周期は120〜150nm,幅は9〜12nmを示しアミロイド線維の特徴を有していた。以上本研究では、β2-mを用いた試験管内fAβ2-m線維伸長反応系を確立し,アミロイド線維の伸長が、試験管内で一次反応速度論モデルに従うことを明らかにした。
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