研究概要 |
本研究では、まず透析アミロイド線維形成機構を解明する手段としての定量的in vitro実験モデルの確立を試みた。アミロイド線維(fAβ2-m)を,透析アミロイドーシス患者の関節嚢胞壁より,Pra法にて精製した。アミロイド線維の伸長反応は,一定量のfAβ2-mと単体β2-mを37℃でインキュベートし,チオフラビンT(ThT)による分光蛍光定量法を確立した。fAβ2-mをseedとして用い,native β2-mによりfAβ2-mを伸長させた試験系においては,ThT蛍光を指標にした線維伸長はpH2〜3で極大を示し,pH2.5では反応開始後蛍光はラグタイムなく増加し,やがて平衡に達した。このアミロイド伸長反応は一次反応速度論モデルに適合した。重合発速度はfβ2-mではpH2.5付近で極大となった。fβ2-m、およびその構成蛋白であるβ2-mのいずれも生体材料から精製したものであり、酸性領域に至適pHを認めたことには何らかの意義があると考えられるが詳細は不明である。透析アミロイドーシスの発症要因であるadvanced glycation end product(AGE)化修飾やアポリポ蛋白の効果をこの試験管内fAβ2-m伸長モデルで検討した。その結果、AGE-β2-mの効果は、native β2-mに比較して反応が乏しく、native β2-mによる重合モデルに対しては伸長反応を阻害する性質が明かとなった。しかし、アポリポ蛋白の効果については現在のところ結論を得るに至っていない。以上、本研究により生体内でのアミロイド線維形成機序を知るうえでの有用なる知見を得ることが出来た。しかし、今後β2-mがアミロイド線維化に変化する要因についてさらに解明を進める必要がある。
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