研究課題/領域番号 |
10670993
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
菱田 明 浜松医科大学, 医学部, 教授 (70111812)
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研究分担者 |
加藤 明彦 浜松医科大学, 医学部・付属病院, 助手 (60324357)
藤垣 嘉秀 浜松医科大学, 医学部, 助手 (20283351)
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キーワード | シスプラチン / 急性腎不全 / アポトーシス / 細胞周期 / DNA修復 |
研究概要 |
シスプラチン誘発急性腎不全において、アポトーシスが生じること、回復期においてみられるアポトーシスは過剰に増殖した尿細管細胞の間引きに関与する可能性があることなどが知られている。我々は平成10-11年度の本研究において、腎障害の発症過程においてもアポトーシスが重要な役割を果たす可能性があることを示した。アポトーシスがおこる過程では、傷害された細胞の修復や増殖と密接な関連にあることが予想される。本年度においては、これらの関係でキーになると思われるG1/S期に細胞周期をとどめるp21、およびDNA修復(PCNA)、細胞増殖(BrdU)や、アポトーシス(TUNEL)などのマーカーの出現とそれら相互の関係をシスプラチンによる急性腎不全の発症から回復期にかけて検討した。その結果、1)p21はシスプラチン投与後3日目と9日目に2回のピークを示して増加する、2)1回目のピークはp53とPCNA陽性細胞の増加を伴ったが、BrdU陽性細胞の増加を伴わなかったことからDNA修復に関係する可能性がある、3)2回目のp21の増加はp53陽性細胞の増加を伴わないことから、細胞分化に関係する可能性があることなどが明らかとなった。さらに、急性腎不全からの回復期にはシスプラチンの腎障害に抵抗性が生じることに着目し、シスプラチン投与14日目にシスプラチンを再投与した後の腎障害の程度、と前述のマーカーとの関連を検討したところ、再投与後のp21とPCNA陽性細胞の増加が増強されることが明らかとなった。このことは再投与後の腎障害の軽減がDNA修復の増加によることが示唆された。以上から、1)腎毒性物質により傷害された尿細管細胞はG1期で細胞回転が停止してDNA修復を行い回復に向かうこと、2)修復が困難な場合にはアポトーシスを起こすこと、3)このアポトーシスの程度が腎組織障害の程度を規定すること、などが明らかとなった。
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