研究課題/領域番号 |
10670994
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
湯沢 由起夫 名古屋大学, 医学部, 助手 (00191479)
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研究分担者 |
水野 正司 名古屋大学, 医学部, 助手 (20303638)
松尾 清一 名古屋大学, 医学部, 講師 (70190410)
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キーワード | 糸球体内血栓形成 / 進行性腎障害 / 接着分子 / セレクチン / 白血球 / 糖転移酵素 / 胎児腎 |
研究概要 |
セレクチン及びそのリガンド糖鎖は炎症の発症・進展に重要な働きをしている。また、一般の炎症のみならず血管内凝固においても白血球の浸潤が深くかかわっている。進行性腎障害において血栓形成はその重要な増悪因子の一つであるが、血栓形成を伴う腎障害における接着分子の関与特にセレクチンやリガンド糖鎖を発現する糖転移酵素の関与については十分に解明されていない。昨年度の動物実験の結果から、(1)ラット糸球体内血栓形成腎炎は、糸球体内への白血球浸潤に完全に依存性であり、(2)抗P-セレクチン抗体により、有意に糸球体内への白血球や血小板の浸潤が抑制される、ことが判明し、P-セレクチンは白血球-内皮細胞の接着及び血小板を介する白血球-白血球の接着に関与し、糸球体内血栓形成に深く関与していることが証明された。この結果に基づいて、本モデルを用いて、近年合成されたスルファチド誘導体(SKK600374)の血栓形成を伴う腎障害における抗炎症効果及び血栓抑制効果について検討した。その結果以下のようなデータを得た。(A)スルファチド誘導体(SKK600374)は、in vitroにおいて、特にP-/L-セレクチンに対して強い阻害活性を示し、シアリルルイスX四糖より有意に高い阻害活性を示した。(B)本モデルに対するSKK600374の、in vivoでの治療効果は、糸球体内への白血球や血小板の浸潤及び糸球体内血栓形成において、ともに有意な阻害活性を示し、抗P-セレクチン抗体とほぼ同等の阻害活性を確認した。 これらの結果よりスルファチド誘導体は、セレクチン阻害薬として臨床応用が期待でき、特に進行性の腎障害における新たな治療の可能性を持つことが示された。
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