糖尿病動物の腎糸球体PKC-MAPK経路の亢進が認められ、この異常が早期の糖尿病性腎症の発症に重要な役割を演じていることを提唱してきた。そこで、本研究では糖尿病モデル動物にPKC阻害剤を長期間投与し、糸球体PKC活性の測定と共に、尿中アルブミン排泄量の測定、そして糸球体の組織学的検討を行った。 1. インスリン依存型糖尿病モデルとしてアロキサン誘発糖尿病ラットを作製した。正常及び糖尿病ラットを、6ヶ月間のPKC阻害剤投与及び非投与群の4群に分け、尿アルブミン排泄量の測定とPAS染色による組織学的検討を行った(n=3)。機能的には、糖尿病群に認められた尿アルブミン量:8mg/日は、PKC阻害剤により4mg/日と有意に改善された。組織学的には、糖尿病群に認められたメサンギウム領域の拡大も900μm2より500μm2と有意に改善された。 2. インスリン非依存型糖尿病モデルとしてdb/dbマウスおよびその正常対照としてdb/mマウスを用い、糖尿病発症後、4ヶ月間のPKC阻害剤投与及び非投与群の4群に分け、糸球体PKC活性を測定すると共に、尿中アルブミン排泄量を測定した。糸球体PKC活性は、糖尿病で15.9pmol/mg protと正常8.8pmol/ng protに比し有意に増強されていたが、PKC阻害剤投与により6.5pmol/mg protと正常化していた(n=6)。尿中アルブミン排泄量も、糖尿病で213μg/日と増加していたが、PKC阻害剤投与により89μg/日と改善されていた。 3. 平成11年度には、2.で用いたマウスの薄切標本を作製した後、TGF-βおよび細胞外基質のin situ hybridization法および免疫酵素抗体法を行う予定である。
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