腎尿細管上皮由来MDCK細胞を用い、高浸透圧による細胞障害にアポトーシスが関与するかを検討した。また高浸透圧環境下で細胞内に蓄積し細胞内外の浸透圧バランスを保つと考えられているオスモライト(ベタイン、中性アミノ酸など)添加の効果も検討した。細胞障害はMTT assay、浮遊細胞の割合により評価した。MTT assay値は500、600、700mOsm48h負荷群はそれぞれコントロ-ルの30±5、10±3、3±0%であり、浸透圧依存性の細胞障害を認めた。1mMのベタイン、タウリン、中性アミノ酸添加により障害抑制効果が認められ、ベタインの効果が最も顕著であった。TUNEL染色は700mOsm24h負荷群の付着細胞において陽性であり、アガロースゲル電気泳動においてもアポトーシスに特徴的なDNA断片化によるラダーが認められた。TUNEL陽性細胞の比率はコントロ-ルが1%以下であるのに対し、700mOsm24h負荷群は12%と有意な増加を認め、これはベタインにより有意に抑制された。アポト-シスに関与するとされるCaspase3活性は700mOsm24時間後にはコントロ-ルの20倍以上の活性を示し、これはベタイン添加により約50%抑制された。Caspase8、caspase9の活性は24時間後にコントロ-ルの3.4倍、7.5倍と増加した。ミトコンドリア膜電位は700mOsm4h後には有意に低下し、ミトコンドリア障害が高浸透圧負荷後の早期に起こると示唆された。これよりMDCK細胞では高浸透圧ストレスによりミトコンドリア障害、caspase familyの活性化をきたし、アポト-シスが誘導されると考えられた。
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