研究概要 |
【背景】PAFは血管透過性亢進作用を有し、ネフローゼ症候群の発症進展に関与することが明らかにされてきた。血中PAF濃度はPAF分解酵素(PAF acethylhydrolase)により厳密に規定されている。最近、PAF分解酵素遺伝子の点変異(G994T)が日本人に発見され、変異を持つ人は酵素活性が低下していることが報告された。遺伝子変異のある人ではPAFが蓄積し、ネフローゼ症候群を発症、再発しやすい状態にあると考えられる。そこで今回、SRNSの発症・再発に、PAF分解酵素遺伝子の変異が関与しているか否かを検討した。 【対象と方法】小児SRNS患者101例と健常コントロール100例を対象に、末梢血白血球からDNAを抽出し、PCR法にてPAF分解酵素遺伝子変異(G994T)の検索を行なった。 【結果】遺伝子変異(G994T)はSRNS患者の26%、正常コントロールの31%に認め、変異の頻度に差はなかった。変異のあるSRNS患者と変異のない患者の発症年齢、男女比に差は認めなかったが、変異のある患者は変異のない患者に比し、PAF分解酵素活性は有意に低下していた(P<0.001).変異のある患者は変異のない患者に比し、発症後1年間の再発回数が有意に多かった(2.61±1.98回vs1.33±1.35回,P=0.0019)。また、変異のない75例中50例(66%)の発症後1年間の再発回数は0または1回で、再発4回以上の症例は6例(8%)にすぎなかったが、変異のある26例中9例(35%)では4回以上の再発を認め、0または1回の再発は8例(30%)にすぎなかった。 【結論】PAF分解酵素遺伝子の点変異(G994T)はSRNSの再発に関与し、変異の有無はネフローゼ症候群の再発を予測するうえで有用な指標となる。
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