我々は、フォスファトニン作用を有する因子を同定する目的で、ヒト骨肉腫細胞のcDNAを作成し、遺伝子クローニングを行った。得られた分子は302個のアミノ酸をコードし、すでに報告されているカルシウム調節ホルモンStanniocalcinに34%の相同生が見られた。そこで、Stanniocalcin 2(SCT2)と命名した。STC2をCHO細胞で発現させ、その機能を解析した結果、腎リン輸送活性およびその遺伝子発現を制御することを見出し、フォスファトニン様機能の存在を確認した。さらに、その発現をノーザン分析法にて検討した結果、骨や小腸をはじめ多くの組織にその発現が確認された。また、その発現は、カルシウムやリンにより変化した。リン輸送担体遺伝子プロモーター領域をルシフェラーゼ遺伝子上流に結合し、その作用を調べた結果、明らかに転写活性を抑制した。さらに、本因子が低リン血性クル病で見られる、原因因子である可能性を、低リン血性モデルマウス(Hyp)を用いて検討した。その結果、Hypマウスにおいては、一部の臓器におけるSTC2遺伝子発現が有意に増加していた。また、SCT2の発現増加を示す臓器においては、その臓器における細胞内リン濃度は変化せず、むしろこれらの臓器より分泌されたSCT2は腎近位尿細管におけるリン再吸収量の調節を行っている可能性が示唆された。また、Hypマウスと同様に低リン血症を引き起こす腫瘍性骨軟化症(OHO)の患者より、腫瘍組織を摘出しSCT2の発現を検討した。その結果、著しいSCT2発現は、腫瘍部位に見られた。さらに、この腫瘍由来の培養細胞を確立し、培養液中に分泌された蛋白の機能特性を調べた結果、SCT2のそれと類似していた。以上より、STC2はフォスファトニン様機能をもつリン調節因子である可能性が推察され、HypマウスやOHOの原因因子と考えられた。
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