研究概要 |
平成10年度は,透析患者におけるエリスロポエチン誘発性高血圧におけるエリスロポエチン(EPO)の役割を明らかにする目的のため,In vitroでEPOのNO産生に対する影響とその機序を培養血管平滑筋細胞で検討した. 近年、血管平滑筋において、Epo受容体の存在が示唆されているが、EPOの血管平滑筋への直接作用が昇圧に関係する可能性も考えられる。ところで、透析患者においては血中サイトカインレベルが高値を示すことが報告されており、サイトカイン刺激により血管弛緩因子である一酸化窒素(NO)の産生が亢進し、血圧調節に関連している可能性が報告されている。一方、EPOが血管作動物質であるNOの産生に及ぼす影響についての検討は少ない。従って,今回我々は次の3点を検討した.1)血管平滑筋細胞にはEPOの受容体が存在するか 2)EPOはIL-1bで刺激したNO産生に対して如何なる影響を与えるか,3)またその機序はどのようなものかという点である.結果は1)血管平滑筋細胞にはRT-PCR法にて検出されるEPO受容体が存在し,splicing variantも認められた.2)IL-1β刺激時の血管平滑筋における一酸化窒素合成酵素(iNOS)のmRNA,iNOS蛋白の誘導及びNOの産生がEPOの添加により抑制され,その作用がEPO受容体の抗体で解除されることも明らかにした。3)また,EPOによるiNOS-mRNA,蛋白,NOの抑制はC-Kinaseを介し,転写のレベルで起こることも明らかにした.今後これらの結果は,国内の学会や国際学会で発表する予定である.
|