研究概要 |
平成11年度は,透析患者におけるエリスロポエチン誘発性高血圧ならびに動脈硬化におけるエリスロポエチン(EPO)の役割を明らかにする目的のため,In vitroでEPOのアポトーシスに対する影響とその機序を培養血管平滑筋細胞で検討した. EPOは、赤芽球系細胞にEPO受容体を介して造血促進のシグナルを伝達しているが、その主体はアポトーシス、すなわちプログラムされた細胞死の抑制であることが知られている。血管内皮細胞や血管平滑筋細胞においてもEPO受容体の存在が示唆されているが、その生理学的意義については必ずしも明らかではない。最近、種々の血管収縮因子や増殖因子が血管平滑筋細胞においてアポトーシスの抑制を介して血管リモデリングを進展させ、動脈硬化症や高血圧症などの発症を修飾しうる可能性が報告されている。一方、血管リモデリングの進展には、血管平滑筋細胞などによる細胞外マトリックスの産生増加が重要であるとする報告がある。従って、今回はEPOの昇圧機序に関して、血管平滑筋細胞におけるアポトーシスとシグナル伝達を検討した。結果としては、EPOはNOによるアポトーシスを抑制したが、そのシグナル伝達はチロシンキナーゼ、PI3キナーゼ、プロテインキナーゼBの経路が関与することが明らかになった。また、サイトカインのIL-1βは時間、用量依存性にアポトーシスを促進したが、EPOとNOS阻害薬はそれを抑制した。また、以前我々はEPOがIL-1βによるNO産生を抑制することを示しておりそれもアポトーシス抑制に関与している可能性が考えられた。以上から、EPOは培養血管平滑筋細胞においてアポトーシスの抑制を介して動脈硬化や血管リモデリングの進展に寄与する可能性が示唆された。
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