研究概要 |
平成12年度は,透析患者で内シャント造設時に得られる静脈片を用いてEpo受容体のサブタイブをPCR法を用いて検討しEpo投与による昇圧との関連を検討する予定だったが、静脈片からのRNA抽出が困難で施行不可能だった.従って、培養血管平滑筋細胞でによる細胞内Ca上昇作用を検討した。 これまでEpoにより細胞内Ca濃度が上昇し、カテコラミン、アンジオテンシンII、エンドセリンなどの昇圧物質の作用を増強することが知られているが、詳細な機序に関しては不明な点が多かった。そこで、今回我々はEpoが培養血管平滑筋細胞において(1)如何なる機序で細胞内Ca上昇させ、また細胞増殖に関連するのか、(2)如何なる機序でカテコラミン、アンジオテンシンII、エンドセリンなどの昇圧物質の作用を増強するのか検討した。 結果としては,(1)Epoは細胞内Caを細胞内への流入増加と細胞内貯蔵からの遊離を刺激して上昇させることが明らかになった。細胞内Ca濃度の上昇にはチロシンリン酸化が重要で、細胞内への流入増加にはprotein kinase Cが重要でL型Caチャンネルを介することが判明した。また、Epoによる細胞内Ca濃度の上昇はMAP kinaseを活性化させDNA合成を促進することが明らかになった。また、Epoの昇圧物質の作用を増強する機序は(1)ノルアドレナリン、アンジオテンシンII、エンドセリンいずれにおいてもEpo前処置により細胞内Ca濃度が増強されたが、ことに細胞内Ca貯蔵からの遊離を増強する可能性が示唆された.しかし、血管平滑筋細胞におけるEpoの作用は高濃度必要とすることから生理的作用か否か今後さらに検討の余地がある。
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