研究概要 |
アンジオテンシンIIは2つの膜7回貫通型のGα蛋白共役受容体、すなわちAT1とAT2受容体を介して、腎臓や心血管の機能調節を行っていることが知られている。今回我々はAT2受容体のGα蛋白との共役が細胞応答の出発点であることに注目し、AT1およびAT2受容体のGα蛋白共役の全貌を明らかにすることを目的とした。まずGαsをもとにした各種ハイブリッドG蛋白質を作成し、AT1,AT2受容体発現プラスミドと共に発現し、アンジオテンシンII刺激後のcAMPの変化の有無をELISAで判定した。この実験系では受容体がGαxと共役していれば、トランスフェクトされたGαs/Gαxを活性化し、cAMPの増加をもたらすことが示されている。(EMBOJ15:2468-2475, 1996, FEBS Lett 406:165-179, 1997)。Gαsを基にした各種ハイブリッドG蛋白質を用いた実験により、AT1受容体がGα蛋白であるGαq、Gα12、Gαiファミリーのいずれとも共役することが示唆された。一方、AT2蛋白実験の結果を確認するために、AT2受容体高級発現細胞株NIH-3T3-AT2の膜分画を調整し、^<35>S-GTPγSと結合させた後、Gα蛋白に特異的な抗体を用いた免疫沈降を行い、Gα蛋白の活性化の有無を検討した。その結果、AT2受容体がGαiファミリーの中で、特にGαi3と共役することがこの実験系で確認された。一方、AT2受容体をHIS-3T2-AT2細胞、血管平滑筋細胞およびメサンギウム細胞に遺伝子導入した実験では、AT2受容体の細胞増殖に与える影響が百日咳毒素で抑制されることよりGαi依存性であることが示唆された。
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