研究概要 |
腎不全病態下で発現の低下するカルシウム受容体(CaR)に対しカルシウム疑似様に作用してCaRを人為的に刺激するCaR agonistを投与した際の腎不全病態の変化を検討した。本年度はアドリアマイシンを2回投与して作成した腎不全ラットにCaR agonistを投与し、骨代謝因子と副甲状腺、骨、腎臓などの組織所見を検討した。腎不全ラットにCaR agonistを1日3mg/kg体重(L)、あるいは30mg/kg体重(H)計12週間投与し、腎不全vehicle投与群(C)、アドリアマイシン非投与(腎機能正常)vehicle投与群(N)を対照に検討した。その結果、腎機能には腎不全3群間で差がなかったのに対し、尿中Ca排泄量はCに比しHで増加し、血清CaはHで減少した。尿中リン排泄量はHで減少し、血清リン濃度は増加した。1,25(OH)2D3レベルはHで減少傾向を認めた。血清PTH、ALP濃度はL,H群とも有意に低下し、低下はH群で顕著であった。副甲状腺の容積、重量は腎不全で増加したものの,L,HでCより低く、組織学的にも細胞数、細胞の容積はCaR agonist投与群、とくにHで有意に抑制された。CaR,VDRについては、Nに比し腎不全3群で発現は低下したが、CaR agonist投与群で発現は増加し、両受容体間には発現に相関がみられた。骨組織では、腎不全に伴う繊維量がL,Hで減少し、線維性骨炎の改善が認められた。腎組織では腎不全でCaR発現の低下が認められたが、CaR agonist投与の影響は明らかにできなかった。また、CaR agonist投与群で、腎組織が比較的保たれる結果が得られた。以上、CaRの賦活化は副甲状腺増殖や骨の線維化を抑制し骨代謝障害を防止するのみならず、腎機能障害進展を抑制しうる可能性が示唆された。
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