研究概要 |
Ca受容体を人為的に刺激した際の腎不全病態におよぼす影響を検討する目的で、ラット6分の5腎摘をはじめとする各種腎不全モデルにcalcimimetics(NPS R 568)を8週間連続投与し、腎機能、PTHなどの骨代謝マーカー、尿中アルブミン排泄量、脂質代謝、および腎臓、副甲状腺、骨組織におよぼす影響を検討した。その結果、PTH分泌や副甲状腺細胞の増殖などの2次性副甲状腺機能亢進症の抑制、骨回転や骨繊維量などの増加で示される線維性骨炎の防止などの従来報告されていた効果が確認された。一方、caicimimeticsの投与により腎不全に伴う血圧上昇は抑制され、尿中アルブミン排泄量にも減少がみられた。またBUN,クレアチニン値、クレアチニンクリアランスから判定した慢性腎不全の進行にもcalcimimetics投与で遅延が認められた。さらに、総コレステロール、LDLコレステロールは減少し脂質代謝異常にも改善がみられた。腎臓の組織学的検討でも、糸球体硬化や、尿細管・間質の病変がcalcimimetics投与群で有意に軽度であった。血圧、腎機能、脂質などの改善は、Ca受容体を刺激することによって得られた、これまで知られていなかった効果である。今後こうした新しい作用機序の解明と、腎不全進行や腎不全病態の悪化に対するCa受容体の関与、さらにはCa受容体刺激の臨床への応用を検討する必要があると考えられた。
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