研究概要 |
近年細胞間接着因子が腎炎発症進展に関与していることが提唱されている。正常腎糸球体には上皮細胞-基底膜間にα3,β1-integrin(int)が発現されており、これらの接着因子が上皮細胞の形態維持および蛋白透過性調節に重要な役割を果たしていると考えられる。今回、我々は、3種類のラット実験腎炎を作製し上記接着因子及びαv-intの動態を免疫組織学的に検討した。膜性腎症のモデルとしてPassive Heymann腎炎(PHN)、微小変化型のモデルとしてPuromycinAminonucleoside腎症(PAN)、急速進行性糸球体腎炎のモデルとして加速型馬杉腎炎を作製し、経時的に尿蛋白量を測定した。また各モデルにおいて蛋白尿の発症時、蛋白尿極期、蛋白尿減少期の3時点でラットを屠殺し腎皮質を得、凍結切片を作製し、抗α3-int、抗αv-int、抗β1-int抗体を用いて蛍光抗体法にて観察した。また、馬杉腎炎においては浸潤マクロファージと接着因子との関連を検索するために、モノクローナルED1抗体との二重染色を行った。PHNにおいては各時期に糸球体係蹄壁に沿ってα3-intが染色され、蛋白尿極期には併せて上皮細胞細胞質内にもα3-intが発現していた。PANにおいては蛋白尿発症時には糸球体係蹄壁に沿って認められたα3-intの発現が減少し上皮細胞細胞質内にび漫性に染色され蛋白尿極期にはその染色強度が強くなった。馬杉腎炎においては糸球体係蹄壁のα3-intの発現には変化が認められなかったが半月体を形成する細胞のうちED1陰性細胞間にはα3-intを認めた。以上の結果より腎炎モデルにより糸球体内のα3-intの動態は異なったが、PANにおいては蛋白尿発症時に糸球体係蹄壁のα3-intの発現が低下と再分布を認め、蛋白尿発症と関連があると思われた。
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