慢性糸球体腎炎において蛋白尿は大きな特徴であり持続性高度蛋白尿は慢性腎炎の進行性悪化因子として重要な指標となっている。蛋白尿出現の機序については糸球体係蹄壁の蛋白透過性が亢進していることがその原因と考えられているが、その機序につては上皮細胞障害、基底膜障害などが知られているが未だ不明な点が多い。高度の蛋白尿が持続している場合、糸球体上皮細胞が基底膜より剥離している所見が認められる。このことは、上皮細胞と基底膜間の接着が何らか原因で破綻を来した結果と考えられる。最近、糸球体上皮細胞と基底膜間を安定して接着している因子がintegrin familyであることが明らかになってきた。今回、我々は蛋白尿出現時の糸球体上皮細胞と基底膜間接着因子に着目し、上皮細胞障害型実験腎炎モデルラットを用いて、各種接着因子の発現状態について検索することにより蛋白尿出現時の接着因子の役割について検討した。 上皮細胞障害型実験腎炎モデルとしてPAN腎症とHeymann腎症をラットに惹起した。PAN腎症では腎炎惹起後3日、7日、Heymann腎症では腎炎惹起後4日、7日における糸球体内3-integrinの発現を蛍光抗体法を用いて検索した。免疫染色切片は共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察し、コンピューター画像解析装置を用いてa3-integrin存在様式、発現量を検討した。その結果PAN腎症においては総発現量は3日目では正常腎糸球体と比較し増加していたが、正常腎糸球体で認められる線状様パターンは消失し上皮細胞内に多く存在してた。一方7日では線状パターンが回復していた。Heymann腎症においては4日には総発現量が低下し線状パターンも消失していた。7日目では上皮細胞内に顆粒状の発現が認められた。以上の結果より腎糸球体におけるα3-integrinの存在様式の変化が蛋白尿発症に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
|