ヒト膜性腎症の動物モデルとしてラットHeymann腎炎が研究されその責任抗原は糸球体上皮細胞に存在する分子量330kDの糖蛋白質megalinであることが近年明らかになった。しかし、ヒトにおいては同様の抗原は未だ発見されていない、また膜性腎症においては上皮細胞下に免疫複合体が沈着することより同腎症の抗原は、上皮細胞に存在すると仮定し、新しい膜性腎症の責任抗原を検索する目的でラット糸球体を抗原としてモノクローナルLF3抗体を作製した。同抗体の抗原は分子量34kDであり糸球体上皮細胞膜表面に存在する事が免疫電顕法で明らかになった。さらに腎糸球体より作製されたλgtll gene libraryより同抗体が認識する蛋白コードcDNAをクローニングししたところ166個のアミノ酸から成る糖蛋白質であることが明らかになり、これをpodoplaninと命名した。このpodoplaninに対する家兎抗血清をラットに静注すると直後より蛋白尿が出現し上皮下に免疫複合体が沈着する事が明らかになった。さらに蛋白尿を惹起させるために抗体以外の液性若しくは細胞性因子を検索するために以下の実験を行った。補体の関与を検索する目的でラットに蛇毒を投与し補体を枯渇させ抗血清を静注した、この場合でも同様に蛋白尿が惹起しうることとが分かった。また活性酸素種の関与を検討するために、これをスカベンジするDMTUを腹腔内投与し同様に抗血清を投与したところ同様に蛋白尿を惹起しうることが分かった。さらに血液成分の関与を検討するために腎臓を単離し血液を除去した後に同抗体を含む培養液(中性dextra添加)を潅流すると30分後より尿中にdextranが検出された。これらの結果より補体、活性酸素種、白血球は同腎症モデルの蛋白尿惹起に関与しておらず、抗体のpodoplaninへの結合が係蹄壁の透過性を亢進させることが明らかになった。
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