膜性腎症は自己免疫疾患の一つであると考えられているが、その責任抗原についてはB型肝炎ウイルスなどごく少数を除いては未だほとんどが明らかにされていない。膜性腎症は特発性と二次性に分類されているが、後者については特に腫瘍に併発した症例が多く報告されており、腫瘍関連抗原が本腎症の自己抗原として考えられているが、現在のところその責任抗原分子の同定についてはほとんど解析がなされていない。動物モデルにおける膜性腎症はHeymann腎症がよく研究されており、その責任抗原は分子量330kDの糖蛋白質であり、最近そのアミノ酸配列が同定されMegarinと命名された。しかしながら、この抗原はヒトには存在しないことが明らかになっており、ヒト膜性腎症の責任抗原分子の解析が本分野における重要な課題となっている。Heymann腎症の責任抗原が糸球体上皮細胞に存在することが強く示唆される。以上の事実より糸球体には未だ未知の抗原が存在し、これが膜性腎症の責任抗原となっている可能性が強いと想定される。今回我々は、ラット糸球体を単離し高pH緩衝液および非イオン性detergentを用いて糸球体の細胞膜を精製、これを抗原としてモノクローナル抗体を作成した。得られた単クローン抗体の対応抗原は分子量43kDであり、糸球体上皮細胞に発現していることが明らかとなり、Podoplaninと命名した。抗Podoplanin抗体をラットに一回投与すると一過性に多量の蛋白尿が惹起され、上皮細胞足突起の消失が起こることが明らかとなった。以上の結果よりPodoplaninは糸球体係蹄壁の透過性を保つ機能蛋白であることが明らかになり、ヒト腎症におる本蛋白質の同態が今後重要な課題であることが明らかとなった。
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