研究概要 |
ホモシステイン(Hcy)は独立した動脈硬化の危険因子であることが確立されてきており、動脈硬化促進のメカニズムは内皮機能障害によると考えられている。腎疾患では糸球体濾過量の低下とともに血漿Hcy濃度は上昇していくので、Hcy蓄積自体が腎障害の促進させる可能性がある。 臨床研究として、18名の保存期腎不全患者において血清クレアチニン濃度の逆数を指標とした腎障害進行速度と血清Hcy濃度の関係を検討したが、直接的な関係は認められなかった。しかし、システイン(Cys)濃度およびCys/Hcy比との間に負の相関関係を認めHcyからCysへの代謝が腎障害進行と関連していることが示唆された。また、Hcy,Cysの尿細管細胞への直接障害を検討するため、腎近位尿細管由来培養細胞であるLLC-PK1細胞において酸化ストレス下でのHcyの細胞障害を検討した。培養液中にHcyおよびシステイン(Cys)とともに、さらに硫酸銅(Cu^<++>)を添加した条件で細胞への影響を、さらに同時にcatalaseおよびSOD(superoxide dysmutase)の効果も検討した。細胞数はAlamar blue、細胞障害は培養液中へのLDHの遊離、細胞内酸化状態として細胞内還元型GSH含量を計測した。Hcy+Cu^<++>およびCys+CU^<++>の条件では細胞数の減少、細胞障害の増強、GSH含量の低下を認めたが、Cys+Cu^<++>の条件でのみcatalaseの追加により改善が認められた。 次年度では腎不全モデルラットにおいてHcyおよびmethionineを投与することによりHcy,Cysの腎不全進行、糸球体硬化促進に対する影響を検討する。
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