研究概要 |
従来よりわれわれは、腎不全の進行に伴い血漿homocysteine(pHcy)およびNO代謝物(NO_3)濃度が上昇することを報告してきたが、酸化ストレスと関連する含硫アミノ酸代謝およびNO代謝が腎障害進行に関与しているかどうか明らかではない。そこで、血清creatinine(sCrn)濃度が2.5mg/dl以上であり9ケ月以上経過観察可能であった保存期腎不全患者において、各患者の経過観察開始時のpHcy、cysteine(pCys),pNO_3、尿蛋白等の因子の腎不全進行速度に対する影響を検討した。腎機能進行速度(SL-ICR)は経時的な1/sCrnの変化の傾きで類推した。HcyはCysへ代謝されるため、Cys/Hcy比との関係も検討した。検討開始時のpHcyとsCrnの間に有意な正の相関関係をみとめたが、SL-ICRとの間には認められなかった。pCysおよびpCys/pHcy比とSL-ICRの間には有意な負の相関関係を、一日尿蛋白量および血漿NO_3とSL-ICRの間に有意な正の相関関係を認めた。一日尿中NO_3排泄量とSL-ICRの間には相関関係を認めなかった。pCysの増加またはHcyからCysへの変換が腎機能障害進行抑制と関連しており、含硫アミノ酸代謝と腎不全進行の関連性が示唆された。また、尿蛋白量のみならずpNO_3増加が腎機能低下に結びつくことから、腎組織内へのmacrophage由来のNOが組織障害性に働いていることが考えられた。
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