アルポート症候群の診断が、正しく、かつ平易にできることを目的として、原因物質であるIV型コラーゲンα鎖(以下、単にα鎖と略す)のモノクローナル抗体を用いた免疫組織学的解析を中心にした診断基準の作成を試みた。すべての症例は遺伝子解析によって遺伝形式を確認している。 多くの症例で、以下の共通点が見られた。 1.伴性優性遺伝型アルポート症候群の男性;α3-5鎖が糸球体基底膜(以下、GBM)やボウマン嚢基底膜(以下、BCBM)から欠損する。皮膚基底膜(以下、EBM)においても、α5鎖が欠損する。 2.伴性優性遺伝型アルポート症候群の女性;α3-5鎖がGBMおよびBCBMにおいて、モザイク状に途切れた局在を示す。 3.常染色体劣性遺伝型アルポート症候群;α3-5鎖がGBMから欠損するものの、α5鎖がBCBMに残存する。性差は認めない。 4.常染色体優性遺伝型アルポート症候群;α3-5鎖は正常のパターンを呈し、健常コントロールと区別できない。 5.家族歴を有さない症例(いわゆる孤発例)の多くでは、一部のGBMやBCBMにモザイク状に途切れた欠損が認められ、個体の発生段階に生じた体細胞突然変異を裏付ける所見を呈した。 これらの典型的所見を呈さない症例を少なからず存在するので、α鎖の免疫組織学的解析に加えて、電顕所見や家族歴などを考慮したうえで診断しなければならないことも判明した。
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