当研究は、P-ANCA陽性糸球体腎炎(P-ANCA腎炎)とHLAとの関連を遺伝子レベルで明らかにして、その動物モデルの樹立することを目的としている。 1) P-ANCA腎炎患者のHLAクラスII遺伝子のDNAタイピング 私達は、P-ANCA腎炎患者について血清学的にHLA-DR8との相関をみている。より多くの症例を収集し、その相関するHLAクラスII遺伝子型をDNAタイピングで検討中である。 SCIDマウスに患者免疫担当細胞を移入してP-ANCA腎炎の動物モデルを樹立する最適の患者を選択するために、P-ANCA対応抗原であるmyelopero×idase(MPO)反応性B細胞、T細胞応答系を確立した。 2)ヒト特異的免疫グロブリンクラス別P-ANCA測定系の樹立 患者群より高力価のP-ANCA産生患者を選択し、併せてSCIDマウス中に産生されるであろうヒトP-ANCAを検出するために、ヒト特異的免疫グロブリンクラス別P-ANCA測定系を樹立した。即ち、精製ヒトMPOを固相化し、患者血清を加え、アルカリフォスファターゼ標識ヤギ抗ヒトI9G抗体を加えた後、PNPPを基質として発色させ定量した。また抗ヒトIgG抗体の変わりに抗ヒトIgA抗体を用いることによりIgA型P-ANCAを検出することが可能となった。 3) MPO特異的T細胞増殖反応の検出 P-ANCAの出現がMPO特異的自己免疫応答に基づくものであれば、MPO反応性T細胞の存在が期待される。そこで精製ヒトMPOと末梢リンパ球を共培養し、その増殖反応をthymidineの取り込みで検討した。その結果ヒトリンパ球は7日目をピークにMPOに反応増殖しうるが、必ずしも患者特異的ではなかった。 4) SCIDマウスへの患者血清の移入 SLE患者血清をSCIDマウスに移入してループス腎炎を発症させた報告があることから、P-ANCA腎炎患者血清をSCIDマウスに移入した。現在までの所明らかな腎症の発症を見ていない。 以上のように初年度は、P-ANCA腎炎患者のHLAとの相関を遺伝子レベルで解析を行うと共に、SCIDマウスにリンパ球を移入するための患者の選定とP-ANCAの検出系、およびSCIDマウスの管理についての準備を終了した。次年度はリンパ球移入実験を行う。
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