当研究は、P-ANCA陽性原発性糸球体腎炎(P-ANCA腎炎)とHLAとの関連を遺伝子レベルで明らかにし、その動物モデルの樹立を目的とした。 1. P-ANCA腎炎患者のHLAクラスII遺伝子 私達は、P-ANCA腎炎患者について血清学的にHLA-DR8との相関を報告した。更にその相関するHLAクラスII遺伝子型を、PCR-DNAタイピング法で検討した。その結果HLA-DRB1^*0803と正の相関を見出した。(相対危険度2.5、P<0.01) 2.ヒト特異的免疫グロブリンクラス別P-ANCA測定系の樹立 ヒト特異的免疫グロブリンクラス別P-ANCA測定系の樹立した。即ち、精製ヒトミエロペロキシダーゼ(MPO)を固相化し患者血清を加え、ALP標識ヤギ抗ヒトIgG抗体を加えた後、PNPPを基質としIgG型P-ANCAを定量した。また抗ヒトIgA抗体を用いることにより、IgA型P-ANCAを検出した。 3.MPO特異的T細胞増殖反応の検出 MPO特異的T細胞の存在を検討するために、MPOと末梢リシパ球を共培養し、増殖反応をチミジンの取り込みで検討した。その緒果ヒトリンパ球はMPOに反応増殖するが、必ずしも患者特異的ではなかった。 4.SCIDマウスヘの患者血清、リンパ球の移入 患者血清をSCIDマウスに移入したが、明らかな腎症の発症は見なかった。 患者よりリンパ球を分離し、SCIDマウスに移入した。患者リンパ球、健常人リンパ球のいずれの移入マウスでもヒト免疫グロブリンを産生したが、P-ANCAは患者リンパ球移入群のみであった。ヒト好中球の同時移入は必要なかった。SCIDマウスの産生するP-ANCAの力価は、患者のP-ANCAの濃度よりも・疾患活動性に依存する傾向が見られた。P-ANCA産生マウスには、著明な脾腫が見られた。高血圧・蛋白尿は見られなかった。腎病変については、病理学的検索を実施中である。
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