高血圧の成因については、遺伝子解析が盛んに行われており、多くの高血圧関連遺伝子が候補にあげられている。我々は、酵母の塩分耐性因子HAL1の機能的相補性を利用して、ラットの腎臓より食塩負荷により発現が増強する遺伝子を分離同定した(Salt-tolerantprotein(STP))。STPは、腎臓の近位尿細管に局在し、過剰発現させた細胞系で細胞内のナトリウム濃度が上昇することから、ナトリウム再吸収に関連した因子と考えらる。その機能、発現調節についての検討を行っている。 (1) 当科外来及び入院高血圧患者よりgenomic DNAを抽出し変異体を検索する。現在、高血圧患者(家族歴のある者を含む)100例、正常コントロール100例のサンプルを集めスクリーニング中である。STPは、C末端にSH3 domainを有しており、ヒトでその上流に停止コドンをもつ変異体を見い出しているため、この部位に焦点をあてて検索を行っている。 (2 ヒトSTP cDNAプローブを用いて、FISH法により染色体上の位置を決定した。ヒトSTPは第19染色体の短腕に位置しており、現在その成果については投稿準備中である。 (3) STPの機能解析のためにジーン ターゲティングを計画しており、現在マウス染色体DNA libraryよりマウスSTPのクローニングを行い、ターゲティングベクターを作成中である。 (4) STPのアミノ酸配列を見るとリン酸化を受けそうなチロシン残基が存在し、STPの活性化機構にリン酸化が関与している可能性がある。ラット腎組織のホモジネート及びラットSTP発現細胞について、抗リン酸化チロシン抗体を一次抗体としてウエスタンブロッティング法にてリン酸化の有無を検討中である。
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