子宮内胎児発育遅延にて出生した児の生後発育を規定する因子について明らかにするために子宮内における各種の成長因子、とりわけinsulin-like growth factor(IGF)-I、IGF-IIに注目し、子宮内から出生早期にかけてのこれらの動態、調節機構をラット子宮内胎児発育遅延モデルを用いて検討した。実験モデルとしてエーテル麻酔下に妊娠17日(ED17)および19日(ED19)のラット子宮動脈を結紮した後閉腹し、妊娠を継続させ出産させた。ED17群は生後の発育が遅延し、ED19は発育が回復するモデルとなると考えられる。対照群として開腹操作のみを実施した後妊娠を継続したものを用いた。これらの手術操作の後に妊娠を継続でき、出産に至る例数は極めて少なかった。ED17群は出生体重が対照群、ED19群に比べて小さく、生後の発育もやや不良となった。しかし、現時点で例数が少なく、ED17群が発育が回復しないモデルになりうるか否かは確定できていない。同様にED19群は対照群に比べて小さく、IUGRとして生まれるものの、生後発育が回復するモデルとして適切か判断できていない。実験例数を増加させてモデルになりうることを確認する必要がある。一方、生後7日のIGF-I値はED17群およびED19群の間で差がみられず、またIGF-II値も同様に2群で差はなかった。このことは生後早期の発育の差をもたらす要因として、IGF-I、IIと関連が少ない可能性もあり、今後の検討課題である。
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