未熟児の子宮内発育遅延児(small for dates:SFD)には生後に発育障害をきたすものがあり、これらの児の発育を規定する因子を明らかにするためにinsulin-like growth factor(IGF)-I、IGF-IIに注目し、子宮内から出生早期にかけてのこれらの動態、調節機構をラット子宮内胎児発育遅延モデルを用いて検討した。妊娠17日(ED17)および19日(ED19)の子宮動脈を結紮した後閉腹し、妊娠を継続させ出産させた。ED17群は生後の発育が遅延し、ED19は発育が回復するモデルとなると考えられるが両者で明らかな生後発育の差は認めなかった。また生後7日におけるIGF-I、IGF-II値はED17群およびED19群の間で差がみられなかった。次に未熟児SFD児で生後発育と血清IGF-II値について検討したが、出生から修正週数40週までの1週あたりの体重増加が150g以上の群と以下の群において出生後1週ごとの血清IGF-IIのレベルは特に差は認めなかった。また、その値は子宮内発育の良好な未熟児(appropriate for dates:AFD)のレベルと差を認めなかった。さらに、未熟児SFD児で出生予定日(修正40週)における体重が2500g以上の群と以下の群で同様に出生後1週ごとの血清IGF-IIのレベルを比較したが、これも差を認めなかったものの、在胎週数をマッチさせたAFD児の各週ごとの血清IGF-IIレベルは明らかにSFD児より高値であった。以上の点より、血清IGF-IIは生後の発育速度を規定するというより子宮内発育・栄養状態を反映するものであり、SFD児にみられる生後発育障害の主な要因とはいえないと考えられた。
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