研究概要 |
マウス副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)受容体遺伝子は4個のエクソンからなり、第1から第3エクソンは5'非翻訳領域を,第4エクソンは5'非翻訳領域の一部と全翻訳領域及び全3'非翻訳領域をコードする。ACTHには、ステロイド合成促進作用、脂肪分解作用、中枢神経系に対する作用が知られているが、これらの作用はACTH受容体遺伝子と同時に単離されたメラノコルチン受容体遺伝子がACTH受容体遺伝子と相同性が高いことから両者を介している可能性があり、特に副腎外の作用は、例えばメラノコルチン受容体遺伝子は脂肪組織にも発現していることから、真のACTH受容体の機能を反映しているとは断定できない。今回我々は、ジーンターゲティング法を用いてACTH受容体遺伝子ノックアウトマウスを作製し、その解析から真のACTH受容体の機能を明らかにすべく研究を進めている。はじめに、ACTH受容体遺伝子の第4エクソン内の5'非翻訳領域のPstIサイトと3'非翻訳領域のSpeIサイトに挟まねた領域(従って全翻訳領域を含む)をポジティブ選択のためのネオマイシン耐性遺伝子カセットで置換し、次に、PstIサイトより1.4kb上流にネガティブ選択のためのジフテリア毒素遺伝子カセットを接続した。3'側の相同領域は翻訳領域の約5.5kb下流のSpeIサイトまでとした。これをプラスミド(pBluescript II SK-)に挿入することにより、5'側よりジフテリア毒素遺伝子カセット、相同領域(1.4kb)、ネオマイシン耐性遺伝子カセット、相同領域(5.5kb)の順に配列されるターゲティングベクターを作製した。これをエレクトロポレーション法にてE14細胞に導入後、G418耐性細胞クローン約500株をサザンハイブリダイゼーション法にてスクリーニングしたが、相同組換えを起こした細胞クローンは得られなかった。そこで、5'側相同領域を3kbに延ばした新たなターゲティングベクターを作製し、現在、E14細胞に導入する実験を進めている。
|