本研究では、ジーンターゲティング法を用いて副腎皮質刺激ホルモン受容体(ACTH-R)遺伝子ノックアウトマウスを作製し、その解析から真のACTH-R蛋白の機能を明らかにすることを試みた。 はじめに、ACTH-R遺伝子ノックアウトマウスの作製のため、129SVJマウスゲノムライブラリーより改めてACTH-R遺伝子を含むファージクローンを単離した。ターゲティングベクターは以下のように作製した。ACTH-R遺伝子の第4エクソン内の5′非翻訳領域のPstIサイトと3′非翻訳領域のSpeIサイトに挟まれた領域(従って全翻訳領域を含む)をポジティブ選択のためのネオマイシン耐性遺伝子カセットで置換し、次に、PstIサイトより1.4kb上流にネガティブ選択のためのジフテリア毒素遺伝子カセットを接続した。3′側の相同領域は翻訳領域の約5.5kb下流のSpeIサイトまでとした。これをpBluescriptII SK-に挿入することにより、5′側よりジフテリア毒素遺伝子カセット、相同領域(1.4kb)、ネオマイシン耐性遺伝子カセット、相同領域(5.5kb)の順に配列されるターゲティングベクターを作製した。これをエレクトロポレーション法にてE14細胞に導入後、G418耐性細胞クローン約500株をサザンハイブリダイゼーション法にてスクリーニングした。しかし、相同組換えを起こした細胞クローンは得られなかった。これは5′側相同領域が短かいためとも考えられ、同領域を3kbに延ばした新たなターゲティングベクターを作製し、現在、E14細胞に導入する実験を進めている。 本研究期間中にACTH-R遺伝子ノックアウトマウスを作製することが出来なかったが、昨年、マウスの18番染色体(ACTH-R遺伝子座は18p11.2)のゲノム配列が公表され、我々が解析した遺伝子構造と一致することが確認されるとともに、今まで不明であった第1エクソンと第4エクソン間は20kbであることが明らかになった。
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