<目的>我々は臨床症状、内分泌学的成績は完全型睾丸性女性化症に一致するにもかかわらず、アンドロゲン受容体遺伝子に異常を認めない症例を見い出した。レポーター遺伝子を用いた本症例の培養皮膚線維芽細胞におけるアンドロゲン依存性の転写活性化能は全く検出できなかった。即ち、本症例は共役因子cofactor群の異常によるアンドロゲン不応症であることが強く示唆された。本研究では(1)本症例の解析によりcofactor病の疾患概念を確立する。(2)本症例で欠損している共役因子をクローニングすることにより、アンドロゲン受容体に特異的な共役因子の構造と特性を解明する。 <本年度の研究計画と成果>前年度までの研究により、本症例ではアンドロゲン受容体(AR)のAF-1ドメインと相互作用する因子の欠損であることが判明した。そこで、患者および正常対照者の陰部皮膚培養線維芽細胞を35S-methionineでラベルし、その細胞抽出液を、AR-AF-1とGSTとの融合蛋白と反応させ、GSTプルダウンアッセイでAR-AF-1と結合する蛋白を検索したところ、正常者に認められる分子量90kDaのバンドが患者で欠損していることが判明した。即ち、本症例ではこの90kDa蛋白の発現低下、あるいはAR-AF-1への結合力が低下していることが推測された。AR-AF-1に特異的な共役因子をクローニングするためにYeast Two Hybrid SystemにおいてAR-AF-1をbaitにして、正常者の培養皮膚線維芽細胞より作成したcDNAライブラリーをスクリーニングしたところ、false positiveの数が多く、数個の核蛋白以外の既知の蛋白が検出された。従って、今後、目的とする共役因子のクローニングには蛋白そのものの単離も必要と考えられ、目的とする共役因子の分子量が同定できたのはこの点において重要な成果と考えられる。
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