我々はヒトAd4BP遺伝子クローニングの過程で偶然、Ad4BP類似の構造を有する部分遺伝子クローンを得たが、ホモロジー検索の結果、Ad4BP関連核内受容体であるmouse liver receptor homologue-1(mLRH-1)のヒト型homologueであることが判明した。Ad4BPがショウジョバエのfushitarazu factor-1(FTZ-F1)のヒト型homologueであることから、これをα型とし、mLRH-1タイプをFTZ-F1βと名づけた。Ad4BPは副腎、性腺の発生、分化に必須の因子であることが確立しているが、FTZ-F1βに関して、不明のことが多く、その解明を目的として以下のような成績を得た。 1.ヒトFTZ-F1β遺伝子の全構造を決定した。そのエクソン/イントロン構造はAd4BP/SF-1遺伝子のそれと構造を異にするA/B領域以外は極めて類似した構造を示した。 2.同遺伝子の5'領域のクローニングを行い、そのプロモーター領域にTATAボックスの存在を認めた。 3.その転写調節機構についての研究を行い以下のような成績を得た。HepG2細胞とCV-1細胞、Hela細胞における基礎転写活性の違いより、hFTZ-F1β5'隣接領域が組織特異的なプロモーターとして機能することが判明した。 4.-1040(Sma I)から-1743(Pvu II)の間に強く転写を活性させる領域が存在する。この領域には3つのHNF-1領域が存在し、hFTZ-F1bの発現調節にはHNF-1aの関与が示唆される。 5.しかしながらHNF-1αはCV-1細胞ではHepG2細胞ほど転写活性を上昇させない。HNF-1aが他の転写因子を活性化させ、間接的にhFTZ-F1βの発現に関与していることが示唆される。
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