今回の研究で微量な組織からヘパランサルフェイトを精製分析する鋭敏な測定法を確立した。この方法はこれまでにない手法であり、今後のヘパランサルフェイトの研究の発展に大きく貢献することが期待される。手術で得られた甲状腺癌および甲状腺癌組織からプロテオグリカンを抽出する。このプロテオグリカンを、Q-sepharose陰イオン交換カラムに吸着させ、緩衝液を10mMのリン酸緩衝液に溶媒交換し、0.35M-1.5MのNaClの塩濃度勾配により溶出する。これらのカラムフラクションの一部をニトロセルロース膜にブロットし、特異抗体を使った免疫反応からヘパランサルフェイトの溶出フラクションを同定する。この方法ではヘパランサルフェイトを定量的に同定できるのみでなく、recombinant FGF-2を加えてクロマトグラフィーを行うことにより、ヘパランサルフェイトのチャージレベルとFGF-2結合能を同時に分析することが可能であった。この方法により分析した結果、甲状腺乳頭癌では正常に較べて、FGF-2結合性のヘパランサルフェイトの1分画が消失していることが証明された。これは、すでに報告している甲状腺癌およびBasedow甲状腺組織内で、マトリックスから遊離して動員されているFGF-2が増加していることと一致したデータである。細胞増殖が盛んな組織内ではマトリックスから遊離してFGF-2が動員され、その細胞増殖刺激作用を発揮しているという仮説を支持する発見であり、FGF-2の活性制御メカニズムを理解する上で重要である。
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