研究概要 |
1型,および2型脱ヨード酵素(D1,D2)は、甲状腺から分泌されたT4を活性なホルモンであるT3に転換する。今年度は,ヒト甲状腺でのD1,D2遺伝子発現調節機序を検討し,バセドウ病での臨床的意義を解明することを目的とした。 バセドウ病甲状腺細胞を細切後、培養し、ウシTSH(bTSH),(Bu)_2cAMP(DBC)及び12-O-tetradecanoylphorbor 13-acetate(TPA)を添加して更に培養した。培養甲状腺細胞からRNAを抽出し、Northern blot法にてD1,D2 mRNAを定量した。 TSH添加により,甲状腺D2 mRNAレベルは,4時間後に上昇しはじめ,12時間後に3倍程度まで上昇した。D1 mRNAも同様にTSHで上昇した.D1 mRNAは,24時間後に上昇し,48時間まで上昇した.基礎発現レベルを比較すると,D2はD1よりも低かった。しかし,TSHによる増加反応は,D2の方が,D1よりも顕著であった.1mM DBCを加えると、D1,D2とも,TSHの時とほぼ同様に、増加した。D1と比較して、D2の増加反応がD1よりも大きいことも同様であった。しかし,ピークは,TSHよりも早く,4-8時間後であった。濃度依存性をみると,TSHは,10から1000mU/ml,DBCは10^<-5>から10^<-3>Mまで上昇反応を示した。これは、D1もD2も同様であった。しかし、濃度依存性は,D2の方が大きかった。一方,protein kinase-C activatorであるTPAは、DBCによる,D1及びD2 mRNAレベルの上昇反応を用量依存的に抑制した。 これらより,ヒト甲状腺ではcAMPによるAキナーゼ経路によるD1とD2遺伝子発現上昇を,PLCからのCキナーゼ経路が抑制することが考えられた。
|