研究概要 |
悪性眼球突出症では、腫大した外眼筋や球後の脂肪組織にリンパ球浸潤がみられるが、浸潤Tリンパ球が両組織の共通抗原を認識しているのか組織特異抗原を認識するかは明らかではない。これまで後眼窩組織における抗原特異的T細胞の存在やそのレパトアの解析の報告はない。 そこで今回、1)外眼筋組織と後眼窩脂肪組織におけるcytokinesの遺伝子発現の比較。2)両組織に浸潤したT細胞のT細胞レセプターのクロナリティー、特にVβレパトアの比較。3)末梢血および後眼窩組織よりT細胞ラインの樹立し、自己の後眼窩脂肪組織由来の線維芽細胞や私どもが提唱した64kDa外眼筋抗原の候補であるsuccinate dehy drogenase(SDH)に対する反応性の検討および自己抗原特異T細胞のT細胞レセプターのクロナリティーの解析を試みた。 1)外眼筋組織と後眼窩脂肪組織におけるcytokines遺伝子の発現を比較 本症患者33例の外眼筋組織や後眼窩脂肪組織よりmRNA抽出し、RT-PCR法にてIFN_γ,TNF_α,IL-1,IL-2,IL-4,IL-6,IL-10遺伝子の発現を検討した。外眼筋組織ではIFN_γなどのTh1系が、脂肪組織ではTh2系cytokinesが有意に発現していた。外眼筋の腫大度とTNF_αの発現との間に有意の関連が示唆された。 2)外眼筋組織と後眼窩脂肪組織に浸潤したT細胞のT細胞レセプターのクロナリティー 同一患者の外眼筋および後眼窩脂肪組織よりmRNAを抽出、cDNAを作製。各V_β5'primersとCb3'primerを用いてPCRを行い、PCR産物を非変性条件下にSSCPを行い、T細胞レセプターV_βのレパトアを解析した。個々の症例でV_β鎖は異なるものの、外眼筋と脂肪組織に移動度が同一のオリゴバンドみられ、両組織には同一の自己抗原を認識するT細胞クーロンの存在が示唆された。 3)自己の後眼窩脂肪組織由来の線維芽細胞に反応して増殖する後眼窩組織浸潤T細胞ラインの樹立と自己抗原特異T細胞のT細胞レセプターのクロナリティー 本症患者5例中2例より自己の後眼窩脂肪組織由来の線維芽細胞に反応する後眼窩組織浸潤T細胞ラインを得た。29例中6例にSDHに反応する末梢血T細胞ラインを得た。現在、これらのT細胞レセプターのクロナリティーの解析を行っている。
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