研究概要 |
1.骨吸収促進因子による骨芽細胞での接着分子の発現誘導とそれを介した骨吸収促進 (1)ICAM-1の発現:ラット骨芽細胞のICAM-1の発現はPTH,IL-1αの24時間刺激後,1.25(OH)_2D_3では48〜96時間で認められた.一方,PGE_2はその発現に何等影響しなかった.(2)破骨細胞形成:マウス骨髄細胞と骨芽細胞の共培養系での1.25(OH)_2D_3(D_3),PTH,IL-1α刺激下のTRAP陽性多核細胞(破骨細胞)形成はICAM-1抗体,LFA-1抗体の添加で濃度依存性に抑制された.骨芽細胞とマウス脾細胞との共存培養系での破骨細胞形成でも(2)と同様の結果がみられた.(3)^<45>Caでprelabelした培養マウス胎児頭蓋骨からの^<45>Caの放出は,D_3,PTH,IL-1αで亢進し,これはICAM-1抗体,LFA-1抗体の添加で濃度依存性に抑制された.一方,PGE_2による骨吸収はこれら抗体で抑制されなかった.(4)ICAM-1抗体,LFA-1抗体はD_3,PTH,IL-1αによるunfractionated bone cellのpit formation(破骨細胞による骨吸収)を抑制したが,PGE_2による骨吸収は抑制しなかった.(5)培養骨髄細胞の無刺激,PTH,IL-1αによるosteoclast differentation factor(ODA),osteoclastgenesis infibitory factor(OCIF)のmRNAの発現はICAM-1抗体,LFA-1抗体の添加で変化しなかった. 結論:破骨細胞の形成には骨芽細胞と破骨細胞前駆細胞との細胞接着が必要である.最近,破骨細胞上のODF(RANKL)と破骨細胞前駆細胞上の受容体(RANK)との結合が破骨細胞形成に関与することが明かとなった.接着分子抗体は,培養骨髄細胞のRANKL,OCIFのmRNAの発現を修飾しないかった.従って,ICAM-1/LFA-1を介する細胞接着は,RANKL/RANK interactionによる破骨細胞形成をサポートし,骨吸収に関与する.D_3,PTH,IL-1αによる骨吸収促進の機序の一つとして,ICAM-1/LFA-1による細胞接着が関与していることが示唆された. 2.骨芽細胞のICAM-1発現機構 上記液性因子による骨芽細胞のICAM-1発現は,これら因子の直接効果ではなく,液性因子が細胞の分化を促進し,その結果ICAM-1の発現を増強している可能性が示唆された.
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