ステロイドホルモンの生合成の律速段階はコレステロールからプロゲステロンへの転換過程であるが、この過程にはコレステロールからプロゲステロンへ転換反応を触媒するコレステロール側鎖切断酵素(P450scc)ばかりでなく、ミトコンドリア内外の多くの因子が関わっている。Stroidogenic Acute Regulatory Protein(StAR)はステロイド産生細胞においてtropic hormoneの刺激に反応して、急速に増加する蛋白であり、ミトコンドリア内へのコレステロール輸送に携わり、ステロイドホルモンの生合成を調節しているとされている。本研究では先天性副腎リポイド過形成症11例で、StAR遺伝子の解析を行い、遺伝子変異を同定した。エクソン7のナンセンス変異Q258Xが22 alleles中12 allelesで認められ、頻度が最も高かった。エクソン2のフレームシフト変異42insG、エクソン6のミスセンス変異A218V、フレームシフト変異238de1Aは、それぞれ2 allelesで見いだされた。エクソン1のフレームシフト変異22de1A、エクソン5のミスセンス変異S195A、R217T、エクソン6のミスセンス変異M225Tは、それぞれ1 alleleで見いだされた。これらの変異のうち、S195A変異とR217T変異はこれまでに報告のない新しい変異であった。R217T変異はエクソン5とイントロン5の境界に位置し、splice donor siteのconsensus sequenceを破壊するするために、アミノ酸置換を起こすのではなく、スプライシング異常を起こすことか予想された。そこで、StAR遺伝子のエクソン4-6を含む領域を、発現ベクターに組込みminigeneを作成して、COS-1細胞で発現し、スプライシングパターンを検討し、R217T変異はエクソン5をスキップするスプライシング異常を起こすことをが明らかにした。
|