ステロイドホルモンの生合成の律速段階はコレステロールからプログネノロンへの転換過程であるが、この過程にはコレステロール側鎖切断酵素(P450scc)ばかりでなく、ミトコンドリア内外の多くの因子が関わっている。Stroidogenic Acute Regulatory Protein(StAR)はステロイド産生細胞においてtropic hormoneの刺激に反応して、急速に増加する蛋白であり、ミトコンドリア内へのコレステロール輸送に携わり、ステロイドホルモンの生合成を調節しているとされている。本研究では先天性副腎リポイド過形成症11例で、StAR遺伝子の解析を行い、全例で遺伝子変異を同定した。これらの変異のうち、S195A変異とR217T変異はこれまでに報告のない新しい変異であった。昨年、R217T変異はminigeneとCOS-1細胞を用いた実験系でスプライシング異常を起こすことを明らかにした。しかし、生体内では一部正常にスプライシングされる可能性も否定できなかったので、R217T置換を有する変異StAR蛋白をCOS-1細胞で発見し、変異蛋白がステロイド産生増強作用を全く示さないことを明らかにした。また、思春期年齢に達した本症女児の卵巣機能を検討し、本症女児の卵巣はエストラジオールを産生するが、排卵とプロゲステロンの産生が障害されていることを明らかにした。
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