我々は膵β細胞で発現している受容体チロシンキナーゼのスクリーニングを行い Insulin receptor related receptor(IRR)が膵β細胞に特異的に発現し、insulin receptor substrate-1(IRS-1)およびIRS-2をチロシン燐酸化することを示した。(Hirayama et al 1999)IRRのリガンドは不明であり、発現クローニングの手法を用いてそのリガンドの同定を試みた。まずIRRの細胞外部分と免疫グロブリンGのFc部分との融合蛋白(IRR-Ig)をコードするベクターを作製し、これを高発現するChinese hamster ovary(CHO)細胞株を樹立した。ポジティブコントロールとしてインスリン受容体の細胞外部分を免疫グロブリンと融合した蛋白(IR-Ig)を発現する細胞も作製した。IR-Igは培養液中でヨードラベルしたインスリンを結合することが証明された。このIR-Igを用いて培養細胞中のインスリンを染色したが、顆粒を染めることはできず、発現クローニングは不可能と判断した。BIACOREを用いてIRR-Igと結合する蛋白のスクリーニングを行ったところ反応するサンプルを得た。これがIRRのキナーゼ活性を活性化するか検討するため、IRRを高発現したCHO細胞を作製し、IRRを小麦胚芽レクチンによるアフィニティーカラムで精製した。このIRRのチロシン燐酸化を活性化する因子はウシ胎児血清からゲル濾過によりインスリン付近のフラクションに検出されたが、2段階以後のカラムのフラクションおよびBIACOREのサンプルでは再現性の良い検出ができなかった。アッセイの感度が不十分であると考え検討中である。
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