研究概要 |
糖尿病におけるインスリン分泌不全は、インスリン低抗性とともに重要な因子であり、膵β細胞massの低下が原因の一つと考えられている。この膵β細胞のmassを規定する因子として、細胞死と分化、再生が重要である。近年膵β細胞は膵島の分化、成熟は胎生期のみならず成人以降の膵の恒常性を保つのに重要と考えられるようになった。膵の発生、分化成熟に関わるとされる転写因子の一つであるPax4に注目し、このRatのcDNAのCloningを行った。既知のmouse cDNAのSequenceよりのPrimerを作成し、λgt10RINm5F細胞cDNA libraryを用いPCRを施行し、ProductをpBluescript SK(-)にsubcloningし塩基配列を決定した。これを基にRINm5F細胞よりのRNAを用いRT-PCRによりcDNA全長の塩基配列を決定した。RatPax4cDNAはpaired domain(PD)とhomeodomain(HD)を1つずつ持ち、4種の異なった長さがあり、isoformと考えられた。Rat Pax4aはmouseと比較して塩基配列で93%、アミノ酸配列で91.7%のHomologyであった。Northern blotでは約2Kbのtranscriptが認められた。4つのisoformの発現についはRT-PCR後Nothern blotを行いRINm5細胞に4種とも発現していると考えられた。一方膵β細胞の減少をきたすものとして細胞死・アポトーシスが重要である。2型糖尿病にみられるインスリン低抗性にTNF-αの関与が示唆されており膵B細胞におけるTNF-αによるアポトーシスの可能性を検討した。培養膵B細胞株(MIN6)で、TNF-α receptor 1(TNFR1)とそのシグナル伝達物質である,TNFR1-associated death domain protein (TRADD),Fas-associating protein with death domain (FADD),Receptor interacting protein(RIP),FADD-like Interleukin-1β-converting enzyme(FLICE)の発現を確認した。同細胞でTNF-αによりアポトーシスが誘導されることを確認した。TNF-αが、スフィンゴミエリナーゼ活性を促進し、スフィンゴミエリン代謝産物であるセラミドによりMIN6でアポトーシスが誘導されることを確認した。すなわち、TNFR1およびそのシグナル伝達物質であるTRADD,FADD,RIP,FLICEが発現していること、TNF-α単独で膵B網胞にアポトーシスを誘導することから、TNF-αは、膵B細胞のアポトーシス誘導に重要な1因子であることを確認した。
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